2014年10月16日木曜日

#17 予備知識







私が20歳前 東京で働き始めのある日曜日の昼下がり
高校卒業してからも手紙のやりとりをしていた同級生で
住所はわかっていた、西オギクボの友達
(彼は当時デザイナー志望で武蔵野美大に在学)
の下宿先に突然訪ねて行った時のこと

当時は携帯なんかない時代でして・・・しかもその下宿先も
古本屋の2Fのふる~~~~い部屋で
その日はあいにく留守でした

しばらく無断で上り込んでゆっくり週刊紙など見ながら 
そのうち帰ってくるだろうと思いながら のんびりしていたら、
だんだん夜もふけてきて 結局一晩中彼は帰ってこず・・・!?

そのうち自分も眠くなってしまい きずけばもう 朝!! しまった!!

あたりはすっかり明るくなっている・・・

目的を達せないまま 物音をたてずに そぉ~~とその下宿を出ようとしたとき
なんと大家らしき人物がいるではありませんか

私は何をおもったのか とっさに 後ろ向きで歩きはじめ
下宿の入口を出ようとしたのです

不運にも?? いや 案の定 大家さんに 見つかりました
そして いきなり 大声で


「そこから入るな~~!!!」っ     と

怒鳴られてしまい 一瞬 ア゛~~!!っと思ったけれども
素直に回れ右して

「すみません!!!」と うなずきながら、何事もなかったかのようにそこを後にしたのでした

あの時 自分はなぜ??とっさに 後ろ向きに出ようとおもったのか?

以前からよく・・・・うちの 大家 うるさいんだよね
とその彼から聞かされていて 
そのことに 体が反応したのでしょうか??

ナイス判断 おかげで助かりました 

と こんな風に少ない情報からでも、ここというときに 活躍するのが
予備知識なんだなと

 この日を思い出すたび そう思うのでした。


     杉山 睦雄 








2014年9月22日月曜日

#16  むづかしい仕事の攻略法




「え~・・・!?ここ直すの~??」




数年前12番目の弟子の知人からのご依頼により
弟子と現場を見に行ったときのこと

そのお宅は 築40数年経過していてそれはそれは外壁がボロボロで・・・

その外壁と初対面のときのこと→エ~・・・!?ここ直すの?

正直な話これが私の第一印象でした
しかし

1時間経過すると→だんだん見えてくる 

2時間経過すると→はっきりと見えてくる 

3時間経過すると→攻略法が浮かんでくる

4時間経過すると→仕事がおもしろくなって来て意欲MAX!!


数か月後 無事工事は完成しさっきまでベールに包まれていた外観の全貌が
あらわになり  小学生~おじいちゃん おばぁちゃん みんなから

「きれいにできたね!!」  とほめられました。

ある人は 毎日通う道なのに何かが違う・・・・?

1瞬 快い戸惑いを感じ、立ち止まっているようで・・・。

その様子を弟子と私は 高い足場の上から眺めさせてもらっていると
真下を通る人たちの聞こえない声も、その仕草で
はっきり読み取ることができるようでして、実に痛快!

ついつい 笑みがこぼれてしまうのです


               杉山 睦雄






2014年8月30日土曜日

#15 快適な住まいづくりとは・・・?


まだまだ暑い日が続いていますね・・・!

1日の仕事がひとまず片付いた夕暮れ時 冷えたビールの1杯は また格別!
最近ちまたでは 塩分控えめの食事をおすすめということですが、
今夜のつまみも 色々用意して頂いたものです。

私はつまみには特にこだわりはない方なんですが
ゆでしらす、桜えびのゆでたて 鶏肉のマヨネーズ揚げ 茄子と胡瓜のぬかづけ
それに チーズケーキ風のお豆腐

これだけあれば十分!!

ひととおり 味わっていたら不足しているものと 足りすぎているものに気付きました。

茄子のお新香は漬かりすぎていて しょっぱかった、
でもチーズケーキ風のお豆腐は塩加減が今少し と思ったのです。

でも近くにお醤油が見当たらなかった・・・?

「アッ!そうだ  この茄子と 豆腐と一緒につまんで試したら???」

けっこういい感じでおいしく頂けたのです。

こんな風に不便なことに 遭遇したとき そのことをストレスと思わずに
どうすればいいか?? 考えるチャンスをいただいたのだ!
そう考えるようにしています。

弟子に対しても最初は使いにくい道具を
あえて与えるようにしているのです。

その道具を 自分で使ってみて、どこが良くてどこが使いにくいかを
自分自身が感じることが大事だから

日頃から不便さを 味わいながら快適な住まい造りとは・・・?
どういうものなのか? と 思い考えている毎日です。

                                         杉山 睦雄

2014年7月30日水曜日

#14 未完成を楽しむ


我が家は30数年前 新築したものですが
その当時から、なぜかところどころ未完成の部分があるのです・・・




当初からここはああしよう・・・?いやこうしよう・・・?
と気持ちが固まらないまま いつのまにか30年!!

でも こうなれば ここの所、随分便利になりかっこよくなるなぁ・・・とか
頭の中でアレコレ想像していると結構楽しいものですよ

住いというもの 家族構成とか
長いサイクルで観れば 意外と流動的であり
その時代、時代を楽しみながら住まえたら 最高!だと思います

今 私のところでは 3才と0才の 孫と 一緒に遊べる空間づくりを考えているところです。
言ってみれば、大人 子供に限らず

人間には 完成はないのかも・・・・・・・

                             

                               杉山 睦雄

2014年5月14日水曜日

#13 不思議な夢


その日の朝、夢なのか現実なのか 分らないまま目が覚め 気が付いたら
ズボンの右と左のポケットに1枚ずつ 行先の違う
電車 の 切符が入っていたのです

自分で買い求めた覚えはないのに、でも好奇心でとりあえず、右のポケットの切符で
最寄の駅から乗って試みることに・・・

目的地に辿り着き降りてみると、それぞれみんな ゾロゾロホームから
降りていくのだけど、改札口はなく、

大勢の人々が 自然にその街に 溶け込むように

やがてみんなの姿がみえなくなって行くのでした。

その町は道路が 全て舗装されていない京都の寺町風。

しばらく 風情ある町を 不思議な感覚で歩きながら 
ほどよく疲れたなぁと思っていたころ、

向こうに駅らしいものが 見えてきて・・・

あっそうだった もう一枚の 切符が ポケットに入っていたんだっ!


その切符で もう一度 電車に乗ることにしたのです

今度降りる町は どんなだろう??

でも どおして 2枚の切符が ポケットに??

と思いながら・・・

・・・・・・


今 手掛けさせて頂いている 仕事でも 一つの仕事が終わるころ 
また 誰かが 新しい 切符を ポケットの中に入れてくれる

有り難いものです 


その繰り返しで早いもので40数年!

これからも その 頂いた切符を 大切にして行きたいです


                棟梁 杉山 睦雄

2014年4月10日木曜日

#12 職人とは

職人とは、  “触認”  でなくてはだめだと思います。
私の今までの 体験から感じたこと・・・
あるとき、仕事のし過ぎで 腰が痛くていたくて・・・ 知人に紹介された
スポーツ整体(有名なスポーツ選手も通っているという)
行きはじめ 10数回通ってから 少し間をおいて通院したときのこと
施療後 先生から 「あんたの腰は シツコイ から もっと頻繁にこないと治らないぞ・・・?」
と カルテ片手にそう告げられました。
しかし その時、いくら6.7人の従業員(整体師)をかかえている先生でも
その言葉を私は 即信用できませんでした。
というのは今まで、10数回通ったのに その先生は まだ一度も私の体に
触れていなかったのです。  さわりもしないで・・・
「紙っぺら1枚をみながら 何がわかるのか・・・?」 と
そうそう この間 運転中のラジオの中で 
私と同じような思いでいる人がいました。
その方も それ相当の年輩のおばあちゃん。
数年前から 高齢から防ぎきれない持病を抱え、評判をたよりに 先生にみてもらった時のこと
検査検査で 病院中 次は3階の・・・とか・・・
待ちくたびれたころ やっと 自分の番が まわってきて
先生にいろいろ不安なところとか
伺おうと思っていた、 ところが 先生は忙しそうに
カチャカチャカチャカチャ ~ と   データを打ちながら
私の方を ちっとも 見てくれない 診てもくれない 触ってもくれない・・・
その時の   “川柳”
「ねぇ先生!! パソコンの中  私はいません」
病気は 気の病と言い、信頼できる先生に世間話のひとつでも
交えながら、極めて少ないひとときでも
“手当”して頂いたとき 50%は 回復の
方向へ行くのだと聞いたことがある。
それくらい 人の手とは、 素晴らしいもので
何事もそうだろう・・・?ではなく 
職人は “触認”でなくてはいけないと 痛切に 思います。

杉山 睦雄
 

2014年2月28日金曜日

#11 小さなおもてなし

だいぶ昔のことですが




、静清国道をトラックで走っていたら
信号付近で立ち止まっている、熟年夫婦連れから
「臨済寺はどちらですか・・・?」と尋ねられ
とりあえずおしえようと話し始めたのですが、
自分の説明ではちょっと 解りずらそうだったので、
「いいよ!ちょうどそっち方面へ行くから
そこまで乗せてってやろうか?」
と言ったら、
「・・・じゃあ申し訳ないけど いいですか?」
「どうぞどうぞ!」  ということになり、門前までお供しました。
別れ際に その熟年夫婦
「全くの初対面なのに親切にして頂き・・・」と
ひどく有難がれました。  その方達は 横浜から来て
静岡へは 観光目的で訪れたと言っていた。
その時人に親切にするとアドレナリンが出て
 TOTEMO 清々しいもんだなと 思いました
よその県からのお客さんに対して静岡県民を代表して
小さな   お ・ も ・ て ・ な ・ し
ができたような気分でなぜかその日一日中気持ちよく仕事ができました。
       棟梁 杉山 睦雄

2014年2月11日火曜日

#10 現場の空気に 慣れる




以前出会ったことのある大工さん、
その方は代々木の体育館とか 広いところの床を専門に手掛けてきた人で
面積の広い床を これから張ろうとするとき 1か月くらい前から
予め床板をほぼ 等間隔に並べて置くのだと
そうすることにより 、 その材が

「現場の空気に慣れてきて言うことを聞いてくれるのだ!」

と教えてくれました。

その時私は 「木も人見知りするんだなぁ・・・」と思いました

私達もそうなんです

ひとつの現場に長く通うことにより様々なことが分ってきて、突然
いい  idea  が浮かんでくる

先ず 現場の空気に慣れると言うことが
職人の第1段階として 大切なことである

            
          棟梁   杉山睦雄

2014年1月21日火曜日

#9 みせたい住宅


40数年、人様のニーズに合わせつつ 様々な家づくりをさせて頂いて、
気づいたことに 

現在 建たれている住宅の相当数が 大手の住宅会社であること

しかし本当に自分たちが思っていたような家が出来ているのでしょうか?

今の家づくりの中には「二世帯住宅」ならぬ、


「みせたい住宅」      になっていないでしょうか??




家の主人公である 住まう人が住みやすく
楽しい家であること

自分たち家族が住む前に 他人に見せるためにつくるような・・・・

人の目をきにするあまりに 造りたいものを
造れなかったりしてはいないでしょうか??

元来 人以外の 動物達は 

「自分の家は自分でつくる!」

これからも 個性豊かな 家づくりをして行きたいものです


                                棟梁 杉山睦雄